みなさま、こんにちは。
申請取次行政書士の高橋です。
今月から「経営・管理(投資・経営)」ビザが一部改正されました。
この改正によって4か月という短期間の「経営・管理」ビザが新設されることになりました。
この法改正の趣旨は、海外在住の外国人が日本で事業を行いやすくなることにあるはずなんですが、本当にこの法改正で海外在住の外国人が日本で事業を行いやすくなるんですか?
インターネット上で他の行政書士の先生のホームページを読むと、あたかも定款さえ作成すれば4か月の「経営・管理」ビザが取得できるかのような記事に出くわすんですが、本当ですか?
私にはそうは思えません。今回の一番の問題は定款ではないですから。
仮に、すでに日本国内に、その外国人の事業に協力する者がいるのであれば、「経営・管理」のビザは取りやすいと思います。
しかし今回の法改正が根本的に目指したのは、おそらく日本国内に協力者が全く居なくても「経営・管理」ビザを取りやすくすることにあったはずです。
でも現実には、日本国内に協力者がいないと「経営・管理」ビザの取得は難しいです。
海外にいる外国人が全て一人で「経営・管理」ビザを取得しようとしても難しいでしょうね。
なぜ難しいのか? その理由について今日はお話しましょう。
(今回の話は、海外在住の外国人が、日本国内に協力者がなく、一人で「経営・管理」ビザを取得しようとする場合の問題点を述べたものです。
日本国内に協力者がいる場合であれば、「経営・管理」ビザは取得しやすくなります
また、すでに日本に住んでいる外国人が「経営・管理」を取得したいというのであれば、従来の手続きを踏襲すればいいだけなので、これも問題はありません。
日本国内に住んでいる人は、そもそも4か月のビザではなく、1年のビザを申請すればいいと思います。)
「経営・管理」ビザを取得するためには事業所を確保することが必要!
それでは4か月の「経営・管理」ビザ取得の問題点についてお話しします。
今回の一番の問題点は、「経営・管理」ビザを取得するためには事前に日本国内で事業所を確保しておかなければならない点にあります。
4か月のビザを申請する前に、日本国内に事業所を確保しなければならないんですよね。
そして事業所を確保するためには、基本的には賃貸借契約を結ばないといけません。
でも、よく考えてみてください。
賃貸借契約を結ぶためには、通常は身分証明書の提出が要求されますよね?
海外にいる外国人がどうやって身分証明書を提出するんですか?
仮にその外国人が日本に来て、大家さんと交渉したとしても、その外国人はおそらく短期ビザしか持っていませんから、日本国内で通用する身分証明書(在留カードといいます)は用意できません。
身分証明書がないのに、大家さんは賃貸借契約を結んでくれるんですかね?
パスポートの提示だけで賃貸借契約を結んでくれるんですかね?
現実には難しいのではないですか。
事前に会社を設立したら賃貸借契約が結べる?
そこで次に考えられる方法は事前に会社を設立する方法です。
今回の問題を人と議論する過程で、ある方から「最近、海外にいる外国人だけでも会社が設立できるようになったから、事前に会社を設立すればいいのではないですか?」という質問を受けました。
この方の言いたいことは、事前に会社を設立しておいて、会社と大家さんとの間で賃貸借契約を結び、それによって事業所を確保すればいいのではないか? という事ですね。
確かに最近、この点に関する手続き改正がありました。
それは、いままでは海外にいる外国人が日本で会社を設立するためには、日本国内に住所を持っている人が必ず1人は代表取締役に入らなければなりませんでした。
しかし2015年3月16日に、「海外に住んでいる人間だけで代表取締役になることができる。これまでのように日本在住者を代表取締役に入れる必要はない。」という手続き改正がありました。
一見すると、日本在住者が不要なのですから、確かに海外にいる外国人が一人で会社を設立し、会社として賃貸借契約を結んで事業所を確保できそうですね。
でも、この方法も難点があります。
それは今回の手続き改正によっても、現実には海外在住の外国人がたった一人で日本で会社を設立するのは難しいという事です。
なぜ、手続き改正があったのに会社設立が難しいのでしょうか?
それは会社を設立するためには、発起人という存在が必要ですが、この発起人が日本国内の銀行に口座を持っていなければならないからです。
つまり海外在住の外国人が発起人になろうとしても、日本に口座を開けません。
仮にその人が短期ビザで日本に来たとしても、短期ビザの人には日本の身分証明書(在留カード)が発行されませんから、やはり日本で口座を作ることはできません。
そのため、会社を作って賃貸借契約を結び、事業所を確保する方法も難しいでしょう。
要するに2015年3月16日の手続き改正だけでは十分ではなかったのです。
確かに2015年3月16日からの手続きにより、少しは海外にいる外国人でも会社を設立しやすくなりました。
でもこの手続き改正だけで、海外在住の外国人が一人で自由に会社を設立できるようになったわけではないということですね。
解決方法は?
では、今回のような場合、どすればいいのでしょうか?
一番いいのは、日本国内に協力者を作っておくことですね。
協力者がいれば、協力者に発起人となってもらい会社を作ることができますね。
また海外在住の外国人だけでは事業所を借りられなくても、日本にいる協力者が連帯保証人等になってくれるのであれば、事業所を貸してくれる大家さんが見つかるかもしれません。
あるいは、日本に住所が無くても口座開設を認めてくれる銀行があれば、発起人はその銀行で口座を開けばいいのですから、会社は設立できます。
(私個人がざっと調べて限りではそのような銀行は無いと思いますが、もしかしたら日本国内にそのような銀行があるかもしれません。)
その他には、たとえば入国管理局が事業所確保の要件を緩めるという運用をしてくれるのであれば、「経営・管理」のビザが取れるかもしれません。
つまり本来は「事業所を確保している」かどうかは、賃貸借契約を結んでいるかどうかで判断するはずですが、今後は賃貸借契約を結ばなくてもよいという運用に変われば、「経営・管理」ビザが取れるかもしれません。
この点について、今後どのような運用をするのか入国管理局に確認したんですが、明確な回答はありませんでした。
入国管理局も今月に新制度になったばかりなので、手探り状態のようですね。
以上、思いつくままに解決方法を書いてみましたが、どれも難しそうな気がします。
結局のところ、4か月の「経営・管理」ビザを創設したといっても、現状ではそれを活かせるような制度にはなってないということですね。
根本的な問題は、「何か月の在留期間を認めるか」という点ではなく、「事業所が確保できるのか」という点ですから。