業務日誌

生活保護の場合はビザが出ません。

みなさん、こんにちは。

行政書士の高橋です。

久しぶりの更新ですが、最近、生活保護に関連したビザの案件を取り扱ったので、それについて書いてみます。

生活保護は入国拒否事由に該当します

外国人女性Aさんの相談を受けたのは昨年6月のことでした。

「在留資格を申請したけれど、3回も不許可になりました。」とAさんは言いました。

なんでも夫を長期ビザで日本に呼び寄せようとしたのに、3回も申請して3回とも不許可になったとのこと。

在留資格申請が不許可になった場合(新規申請の場合)、入国管理局から在留資格認定証明書不交付通知書というものが届きます。

この不交付通知書には、ごく簡単に不許可の理由が記載されます。

Aさんの場合は、3回とも次のような一文が記載されていました。

「本邦に上陸しようとする外国人は、出入国管理及び難民認定法第5条第1項第3号に定める上陸拒否事由に該当しています。」

…ん、なんだ、これ?
入管法5条の上陸拒否事由…???

まさか、上陸拒否事由に該当する方からの相談だとは思いませんでした。

いかに私が入管法に詳しいとはいえ、入管法の5条1項3号がどのような条文か、すぐにはわかりませんでした。

しかし入国管理局から届いた不交付通知書の封筒を詳しく見ると、不交付通知書のほかにも紙切れが入っていました。

それは入管法5条が記載された六法のコピーでした。
しかも、ご丁寧に5条1項3号にはマーカーで線が引いてありました。

入管法5条1項3号は次のような条文でした。

第5条1項 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。

3号 貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者

要するに、生活費のない者は日本に入国できない、というのが入管法5条1項3項の趣旨です。

以前、大阪で多数の外国人が日本に来てすぐに生活保護を受給したが事件がありましたが、ああいうことは許さないという意味なんですね。

さて、よくよく話を聞いてみると、Aさんは生活保護を受けていました。

入国管理局からすれば、生活保護を受けている人の夫を入国させると、夫も生活保護を受ける可能性があるので入国を拒否したということです。

これでは何度ビザを申請しようとも、許可されることはりません。

それでは、Aさんにはなぜビザが出ているのでしょうか?

実はAさんは既に永住のビザを持っています。

永住取得後に生活保護を受けることになったのですが、生活保護を受けたからといって、永住の資格を剥奪されるわけではないのです。

仮にAさんが生活保護を受けている状態で永住ビザを申請したとしたら、当然のことですが、永住は許可されないでしょう。

入国するためには、生活保護をはずしてください。

この状況を受け、私がAさんに言ったのは、

「ご主人を入国させたければ、生活保護をはずすしかありません。生活保護を止めることはできますか?」

ということでした。

Aさんと話をすると、Aさんはここ数年は病気で働けず生活保護を受けていたが、最近は体調がよく、仕事時間を増やすことができれば生活保護を止めることができる、とのことでした。

その後、頑張ってAさんは仕事時間を増やし、生活保護をはずしました。

ところで、今回の件で知ったのですが、生活保護って受給する場合だけでなく、中止する場合も役所(広島市)の審査があるんですね。

てっきり「止めます。」といえばすぐに止められるのかと思っていました。

Aさんの場合は働く時間を増やしたこと等から、広島市から生活できると判断され、生活保護を中止することができたのでしょう。

それを受け、私がAさんの旦那さんのビザの申請書を作り、入国管理局にビザ申請を行いました。

けれど、ここからが大変でした。

確かに広島市はAさんが自立していると判断し、生活保護を下しました。

しかし、入国管理局の審査基準は、広島市の審査基準とは異なります。

はっきりいって、今回のようなケースでは、広島市よりも入国管理局の審査の方がはるかに厳しくなります。

そのため、申請に際して入念な準備を行ったのですが、それでも予期せぬ数々の障害に見舞われました。

最終的にビザは認められたのですが、私たちは1年のビザを申請したのですが、6か月のビザしか認められませんでした。

しかし、生活が安定すれば更新することも可能ですし、状況によってはより長期のビザが認められることもあります。