みなさま、こんにちは。
申請取次行政書士の高橋浩二です。
さて、今回は「会社設立だけでは「投資・経営」ビザは出ない」というお話です。
「投資・経営」ビザを取るには具体的な事業計画が必要です
外国人の中には、会社を設立しただけで「投資・経営」ビザが取れると思っている人がいるのですが、大きな間違いです。
会社を設立しただけでは「投資・経営」ビザは取れません。
なぜ、会社を設立しただけでは「投資・経営」ビザは取れないのでしょうか?
それは会社を設立しただけでは、本当にその人が事業をするつもりかどうか分からないからです。
仮に会社を設立をしただけで「投資・経営」ビザが認められるとすると、会社を設立しただけで、あとは何もしなくても日本で数年間過ごすことも可能になってしまいます。
このような事態を防ぐために、単に会社を設立するだけではなく、実際に事業を行う意思があることを示すことによってようやく「投資・経営」ビザが取得できるわけです。
具体的な開業準備によって事業意思を示す!
では事業を行う意思があることをどのように示せばいいのでしょうか?
これはもう実際に事業の準備をしていることを示すしかありません。
どのような準備が必要なのか? という話ですが、少なくとも、会社を運営するための事務所があることは必須ですね。
ときどき借りている自宅アパートを会社の事務所としている人がいますが、自宅で開業する場合は、貸主の同意が必要になる場合があるので気を付けてください。
その他、例えば飲食店なら内装の準備をしないといけないですし、何の料理を提供するか、材料をどこから仕入れておくかということを決めておかないといけないです。
そうすると内装費、仕入代など準備だけでかなりのお金がかかりますね。
あるいは貿易の会社を運営するのであれば、仕入商品は何か? どこから商品を仕入れるのか? 販売先は? 販売方法は? 代金回収方法は? といったことを決めておかなければなりませんね。
このような準備をしたうえで、損益予想を含んだ事業計画書を作成します。
具体的な計画がなかったAさんの例
私がかかわった実例を一つ上げてみます。
最近、「投資・経営」ビザの申請に落ちたというAさん(中国人)から連絡をもらいました。
Aさんいわく、会社を設立して「投資・経営」ビザの申請をしたが、不許可になった。出国準備のために1か月だけ猶予あるが、今後も日本で事業をしたいので、何とかならないか?」という相談でした。
すぐにAさんと会い、入国管理局に提出した事業計画書を見せてもらいましたが、不許可になった理由はすぐに分かりました。
Aさんの事業計画書には何ら具体性がなかったのです。
事業計画書には、たとえば「広島の食品スーパー●社(広島では有名な会社)と取引がしたい。」とか「日本の商品を中国で販売する」というの記載がありましたが、それ以上、具体的なことは書かれていませんでした。
何処で、どのように売るとか、売上・費用の予測とか、そういったことは一切書いてありません。
それ以前に、そもそも何を売るのか具体的な商品名の記載すらありませんでした。
本人は会社さえ作れば、「投資・経営」のビザは出ると思い込んでいたようですが、これでは貿易事業とはいっても、どのような商売をするのか全く分かりません。
不許可になるのも当然ですね。
まずは商品のメニュー作りから
残り1か月、といっても現実には2週間、せいぜい3週間程度の猶予しかありません。どこまでできるか分かりませんが、できるところまでやることにしました。
まず私がAさんに言ったのは、「まず商品メニューを作ってください。」ということでした。
何をいくらで販売する予定か分からなければ計画の立てようがありません。
本人の第1希望は、まず海産物とか農作物を中国から輸入し、広島の食品スーパーで売りたいとのことでした。
しかし日本のスーパーが、できたばかりのAさんの会社と取引をするはずがありません。
仮に取引をするにしても、かなりの数量を安定的に供給しないと相手にしてくれないはずです。
そうするとそれだけの数量を確保できるのか? 確保できるとしても流通経路はあるか? 商品を保管しておく倉庫はどうするのか? という疑問が次々に出てきます。
そうすると、とても数週間で準備しきれるものではありません。
そこで海産物・農作物の輸入事業はいったんあきらめ、本人の次の希望である、日本の商品を中国に売るという方向で検討を始めました。
商品をどこで仕入れるのか? 中国でどうやって販売するのか? という点を検討し、なんとか一応商売として成り立つという販売ルートを設定しました。
諸々の事情により、どんな商品を扱ったのか? どのような販売方法を採ったのかはここで書くことはできません。
しかし、当然のことならが入国管理局に提出する事業計画書では品名、値段、販売場所、販売方法を書く必要があります。
また単に事業計画書に書けばよいのではなく、見積書や契約書など証拠となる資料も提出します。
事業計画書も大事ですが、それ以上にこのような証拠を提出することの方がもっと重要です。
損益の予測を立てる
商品や販売方法が決まったところで、損益計画を立てました。
まず大体の売上を予測します。
今回は、商品と販売方法が各々複数あったので、商品別及び販売方法別の売上を予測し、それを集計して売り上げを算出しました。
続いて費用の算出です。
仕入のほか、賃料、人件費、中国までの郵送料、その他必要となりそうな費用を考慮し、損益計画を作りました。
ただ、Aさんの事業は初期費用がほとんどかからないし、自宅アパートでの開業なので、ちょっと困った点がありました。
Aさんの事業というのはこうやって見てみると、事業規模があまり大きくなりません。
事業規模の大きくないビジネスは起業はしやすいのですが、反面「投資・経営」ビザを取得する観点からは問題も発生します。
その問題がどのようなものかここでは書けませんが、その問題点を回避しつつ損益の計画を作るのは、かなり苦労しました。
あと会社の場所が賃借している自宅のアパート(住居用)なので、大家さんから事業をやってもいいという同意書をもらいました。
ビザは認められたけれど
Aさんと共に事業内容及び事業計画を練り直した結果、なんとか「投資・経営」のビザを認めてもらうことができました。
しかし今回の事業内容・事業計画には問題もあります。どんな問題かは書きませんが。
入国管理局も問題があることは十分承知しています。
そのため私とAさんは入国管理局に呼び出され、担当の審査官から「今回はビザを認めますが、1年後の更新時の審査は厳しく判断します。」と言われました。
当然そうなるでしょうね。
みなさんは、このようなことがないように十分に準備をしたうえでビザの申請をしてほしいと思います。