業務日誌

入国と上陸の違い 外国人が空港審査で拒否された!

みなさん、こんにちは。

申請取次行政書士の高橋です。

今日は日本の「入国」と「上陸」の違いについて書いてみます。

普通は「入国」と「上陸」の違いを認識する必要は全くありません。
ですが例外的にその違いを認識する必要もあるかも? というのが今回の話です。

中国人調理師の在留資格申請を行いました

以前、中国人調理師の在留資格認定証明書交付申請を行いました。

ある中華料理店の経営者からの依頼だったのですが、自分のお店で働く中国人調理師を中国から呼び寄せたいので在留資格を申請してほしいとのことでした。

調理師を呼び寄せるためには「技能」という在留資格を申請します。

しかし中国人調理師の在留資格審査は、若干厳しいです。

今回も、1回目はほんの些細な点で不許可となり、2回目の申請でようやく在留資格認定証明書が交付されました。

査証の申請が遅れました

さて、在留資格認定証明書が発行されると調理師は3か月以内に日本に来なければなりません。

そのためには在留資格認定証明書を調理師のところに送り、、調理師が日本の大使館・総領事館で査証の申請をする必要があります。

しかし今回は査証の申請が遅れました。

その調理師さんは、(どのような事情があったのかはわかりませんが)在留資格認定証明書が交付されてから2か月後にようやく日本大使館・総領事館で査証の申請を行いました。

そして査証の申請に時間がかかり、申請から3か月たってようやく査証が認められました。

でも空港の審査に引っかかります

査証が認められたため、この調理師さんは飛行機で日本の空港までは来ました。

けれど、この方はもともと在留資格認定証明書が交付されてから3か月以内に日本に来なければならないので、空港の審査で引っかかりました。

そしてかわいそうですが、そのまま中国に帰国しなければならなくなりました。

ようやく今回の本題 ~入国と上陸の違い~

さて、このような事態を受けて、もう一度、在留資格申請をすることとなり、在留資格申請書を作り直すことになりました。

ところで在留資格申請書を作成する場合、申請書にはその外国人が今まで日本に来たことがあるかどうか、「日本への出入国歴」を記載する欄があります。

前回、この方の在留資格申請書を作成した際は、「出入国歴はありません」と聞いていたので、今回も何も考えず、「出入国歴無し」として在留資格申請書を作りました。

けれど打ち合わせの段階で、依頼者である経営者の方に「今回の調理師さんは空港の審査に引っかかったんですけど、この場合の出入国歴は「有り」ですか? 「無し」ですか?」と聞かれました。

私はこの時に初めて、この調理師さんの出入国歴が有りなのか無しなのかという問題が発生したことに気づきました。

みなさんは、この方の出入国歴は「有り」だと思いますか? それとも「無し」ですか?

日本の領海、領空に入ることが「入国」、日本の領土に足を踏み入れることが「上陸」

答えを書くと、この人の出入国歴は「有り」です。

日本の法律(出入国管理及び難民認定法)の定義によると、入国というのは、日本の領海、領空に入ることをいいます。

「入国」した後、空港等で審査を受けるわけですが、その審査のことを上陸審査といいます。
そして上陸審査を通過して、日本の領土に足を踏み入れることが「上陸」です。

基本的に「入国」は誰でもできます。
しかし「上陸」するためには審査があります。特にその外国人が上陸拒否事由に該当している場合は、「上陸」はほぼできないと考えたほうがいいでしょう。

今回の調理師さんの例では、調理師さんは日本の空港までは来ているのですから、日本の領空には入っています。
つまり日本に「入国」しています。

その後の上陸審査では、在留資格認定証明書の有効期限も審査されるため、これに引っかかったのは残念ですが、仕方がありません。

専門家も結構間違えます

今回の件を通じて、この調理師さんが出入国歴有りということは分かりました。

ただ、念のため、担当役所の実務上の取扱いも確認しておこうと思い、担当役所である入国管理局の審査部門に電話をかけ、「空港の審査で拒否された方の場合、入国歴は有りですか?、無しですか?」と聞いてみました。

すると電話対応された方は、「入国歴無しと記載してください。」とのことでした。

さらに別の入国管理局の審査部門に電話をかけて聞いてみると、その電話に出られた方も「入国歴無しでお願いします。」とのことでした。

このことから私が思ったのは「この調理師の出入国歴が有りだろうが、無しだろうが、誰も気にしないんだな。」ということでした。

本来であれば、「過去の出入国歴欄」の記載は最重要事項のひとつです。書き間違えると、それだけで不許可になることもあると聞きます。

ですが、今回のような特殊な場合だと、書き間違えても「勘違いでした。」で通りそうな気がする…そんな案件でした。